禁断のステテコ

 子供の頃、ステテコという妙な衣類を目にした時は「自分は大人になってもこんな物を身につけることは絶対に無いだろう」と固く信じていました。聞くところによると、ステテコを穿くとズボンと肌の間にスキマができるので通気性が良くなり、暑い時期でも比較的快適に過ごせるそうなのですが、いくら快適であろうと見た目がカッコよくない物を着るぐらいなら汗で蒸れた方がまだマシだぐらいの心づもりでおりました。このあたりは、真冬の極寒の日でもスッゴイ短いスカートを穿いている若い女の子の心理と似ているかもしれません(似てないか?)

 従来の「真っ白なステテコ」ではなくて、若い世代にも受け入れられそうなカラフルなデザインのステテコが登場したのは確か2〜3年前だったと思いますが、それらを見ても穿きたいとは思いませんでした。何故なら、デザインが変わったところでステテコはステテコであり、ステテコはサザエさんに出てくる波平とかバカボンのパパが穿くような「日本の正しいオトッツァン」を象徴するアイテムだからです。

 ところが先日、ユニクロへ行った際に今風(?)のステテコが売っているのをみつけ、節電節電と囂しい昨今、少しでも涼しく感じるならと思い試しに買って、部屋着として着用してみたところ、そのあまりの快適さに驚きました。何というか、今まで両足にとりついていたネガティブなオーラの呪縛から解き放たれて、ふわっと軽くなったような心地よさです。さすがにこの姿で街中へ出るには勇気がいると思いますが、これを穿いてマラソン大会で走ったら随分と良いタイムが出そうな気がする軽さと快適さなのです。

 若い頃は頑なに拒んでいたものが、年齢を重ねるうちに抵抗なく受け入れられるようになるのは、「妥協」と言うのかしれませんし、易きに流れるという意味では「堕落」という側面も含んでいるのかもしれませんし、単に年齢と伴に抵抗する体力が減少したということなのかもしれませんし、抵抗することにどれほどの意味があるのだろうかという事に気がつくだけの視点が備わったのかもしれません。でもそうしたとかくマイナスな面へ向かいがちな意識を巧妙に逸らすデザインとかイメージ戦略は、どのメーカーが考え出したのかは知りませんが、上手いなあと思います。冬バージョンで言えば、ラクダのシャツやいわゆるババシャツを着るのは抵抗があるけど、ヒートテックならOKというのと同じことなのでしょうね (^^)