『東京プリズン』

東京プリズン

東京プリズン

 新聞各紙の書評では、ほぼ大絶賛ばかりで、本の腰帯には「文学史的"事件"」とまで書かれている『東京プリズン』を読みました。

 ストーリーは、時空や次元を飛び越えてあっちこっちを行き来したり、不思議なモノを見たり不思議な声と対話したりといった展開をして、それらを壮大な伏線として最終的には「天皇に第2次世界大戦の戦争責任があるか」を議論するディベートへとなだれ込んでいきます。
 あの戦争をこういう切り口で描くのは面白い(「文学史的事件」かどうかは別として)と思いますし、夏のこの時期に戦争について考える時間を持つというのはタイムリーだとは思います。しかし、小説としては読み難く、言いたいことはわかるけどピンときませんでした。その「ピンとこない」理由は、この作品の出来が良いとか悪いとかではなく、小説でありながら詩のような質が多分にあるからであり、詩を読むときのように、作品の波長と読む側の感受性がぴったりと合致しないとその良さを十分に感じ取ることが出来ないように思いました。
 
 学校の授業では、第2次世界大戦をクローズアップして取り上げるだけの十分な時間は無く、むしろサラっと通り過ぎてしまうので、曖昧な知識しか持っておらず、この小説を読んで初めて知ったこともありました。それでも、あの時代のことに関してはまだまだ曖昧で、真実から巧妙に目を逸らされているようなモヤモヤした感じは残ります。