『服従』

服従

服従

 以前の記事でもチラッと触れた『服従』という本を暫く前に読み終えました。フランスでイスラム系の政党が政権を握るというお話。それによって起こるフランス社会の変化が、ある大学教授の男性の目を通して描かれています。
 読み始める前は、現実の世界で起こっているような血で血を洗うような激しい抗争もあるのかと思っていたのですが、そういうのは全く無くありません。しかし、静かにジワジワと、けれども確実に社会が変化していく様子は、「激しい抗争」よりも不気味に感じました。また、この物語に描かれているのは、社会の変化の大きなウネリのほんの一側面であって、実はもっと深刻な変化が見えないところで進行していると読者に思わせるストーリーの深みがありました。
 この本は大きな流れの序章に過ぎないように感じられるので、いつの日か続編が出版されることを楽しみ待ちたいです。