富士額


 日本語に翻訳されたアメリカの小説を読んでいましたら「富士額」という言葉が出てきました。犯罪者である主人公が変装用のメークをしているシーンで、額をメイク用のペンで「富士額」にしたと書いてあります。「富士額」などという和風の言葉をこういう海外の小説で用いるのは、何だかちょっと違和感があります。もしも英語圏にも「富士額」という言葉があって、日本語がそのまま英語になった言葉(例えば「tsunami津波)」や「karoshi(過労死)」)のように使われているならともかく、「こんにちは、ジョン。あなたのフジビタイはとっても素敵ね。」といった会話が日常的に交わされているわけではないので、たとえそれがまさに富士額であったとしても、この言葉を使うと雰囲気が壊れてしまうように感じます。
 因みに、英語では「富士額」のことを「widow's peak」、直訳すると「未亡人の額(生え際)」というそうです。そういう形の生え際をしている女性の夫は早死にして未亡人になるという迷信があるのだそうです。