岩野響君のもう1冊の本

コーヒーはぼくの杖~発達障害の少年が家族と見つけた大切なもの

コーヒーはぼくの杖~発達障害の少年が家族と見つけた大切なもの

 中学卒業後に高校へ進学せず、コーヒー焙煎士の道を選んだ岩野響君の本をもう1冊読みました。最初に読んだ『15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ』に比べると、この『コーヒーはぼくの杖』の方が面白く感じました。2冊の本ともに、響君が書いた章、お父さんが書いた章、お母さんが書いた章が順番に繰り繰り返されている、という構成は同じなのですが、今回読んだ『コーヒーはぼくの杖』の文章の方が、より実感が込められているというか、気持ちが伝わってくるというか、響君が書いた章は15〜16歳の少年らしい息づかいが感じられたし、御両親の章はそれぞれ違ったトーンが感じられるところは読み物としての面白さがありました。そうでありながら、目指す方向は同じというところに、両親の愛、三人で歩調を合わせていく姿にジーンときました。「歩調を合わせる」という愛のひとつの形があるのだなぁ。

 焙煎士としての響君は、この歳にしてここまでしっかりと目指すべきものが分かっているのは凄い才能です。彼が焙煎したコーヒー豆を買うお客さんは、初めは「頑張っている若者を応援したい」というスタンスの人が多かったのではないかと想像しますが、実際に彼のコーヒーを飲んでみるとその完成度の高さに驚くのではないでしょうか。これからも凄いスピードで焙煎の腕を上げていくことでしょう。楽しみです。