タコ焼き器

 先日、たい焼きを食べながらふと思い出したことがありました。まだ小さな子供だった頃、ある日、父がタコ焼き器を買ってきました。小麦粉を水で溶いたり、ぶつ切りにしたタコとか紅生姜などの材料を用意すると、家族みんなが興味津々で見守る中、父はタコ焼きを作りはじめました。今にして思えば、タコ焼きなんて高度な調理技能が無くても誰だって作ることができるのでしょうが、それまでお店でしか買えなかったものが、家庭で作れるということに少年(私)は素直に驚きを感じたのでした。そうやってポンポンと出来上がっていくタコ焼きを見ているのは楽しかったのですが、そもそもタコ焼きが特別に好きというわけではなかったので、1〜2個食べれば十分でした。そんな事態を予想していたのか、次に父はぶつ切りのタコや紅生姜の代わりに茹でた小豆を入れたものをタコ焼き器で焼いてくれたのでした。甘いものが大好きだった私には、そちらの方が断然美味しく感じられ、ぱくぱくと何個も食べました。その時のタコ焼きの味は全く覚えていないのですが、小豆を入れた方の味はしっかりと記憶に刻み込まれ、その記憶が先日たい焼きを食べている時に鮮やかに蘇ってきて、子供の頃にタイムスリップしたというか、あの頃と現在が時空を超えて繋がった感覚がありました。タコ焼き器でタコの代わりに小豆やあんこを入れるなんて、普通の家庭ではやらないのかと思いきや、ネットで調べてみるとクックパッドとかにたくさんのレシピが紹介されていました。いつか自分でも作って食べてみたいです。