馬の写真

 馬の写真を撮ろうとしたことが以前ありました。あれは確か年賀状用の写真として使おうと思って撮りに行ったので、ということはあれから干支が一巡したってことなんだなあ。「この先の12年」というと随分と先のことのように思えるのですが、後になってから振り返ってみる12年という年月は意外とあっけなく過ぎ去ってしまっているものなのかもしれません。

 それはさておき、12年前に馬の写真を撮ったのは岐阜の笠松競馬場でした。オグリキャップという名馬が誕生した場所として競馬ファンには知られているかもしれませんが、他にこれといったアピールポイントも無いさびれた地方競馬場です。通勤に利用している電車がこの競馬場の脇を通り、朝は車窓から練習風景を眺めることが出来るのですが、朝靄の中を疾走する馬の姿はなかなかフォトジェニックでしたので、ある休みの日の早朝にカメラ機材一式を抱えて笠松競馬場へ行きました。当時、私が持っていた望遠ズームは焦点距離が200ミリで、これでは明らかに足らないので2倍のテレコンバーターを装着して400ミリとしたのですが、それでも距離が足らなかったので馬が走るコースの柵のすぐ近くまで寄ってカメラを構えていました。そうしたら、走ってきた馬が私の存在に驚いて急停止してしまいました。そしてその馬に騎乗していたジョッキーに「俺たちは命をかけて馬に乗ってるんだから、馬を驚かせるような行為は慎んで欲しい」と叱られてしまい、それはもっともなことで全面的に私が悪いので、謝罪してスゴスゴと引き上げてきました。ちょうど近くに他のアマチュアカメラマンがいたので少し立ち話をしたのですが、その人はキャノンのEOS1N(当時はまだフィルムカメラの時代でした)に600ミリの望遠レンズ(100万円以上する高価なレンズ)を付けていました。その人は、走っている馬の脚だけをアップで捉え躍動感を表現した作品で賞をとったことがあると言ってました。一般的に、普通の風景写真だとかポートレイトだとかスナップ写真は、それほど高価な機材が無くてもそれなりの写真が撮れるのでしょうが、スポーツ関係の写真はどうしても望遠レンズが必要で、しかも速いシャッタースピードが不可欠なので明るいレンズが必要となり、となるとどうしても機材の価格が1〜2桁増えることになり、私のお給料ではとても手が届かない世界であることを思い知ったのでありました。その時のことを今でも電車から競馬場を見るたびに思い出してしまいます。