シャガール展@名古屋

 名古屋の愛知県美術館で催されているシャガール展に知人と一緒に行ってきました。一昨年、岐阜の美術で行われたシャガール展にも行ったのですが、好きな画家であるのでまた観たくなったのです。ですから、前に観たのと重複した絵が多かったとしても仕方がないだろうなと思っていたのですが、いざ美術館の中へ入ってみると前回の岐阜を大きく上回る数の作品が展示されており圧倒されました。最終的な作品だけでなく、紙に鉛筆で描いたスケッチ(下がき)も併せて何枚も展示されており、創作の過程が見て取れたのは興味深かったです。また、単にキャンバスに油絵の具で描く作品だけではなく、パリのオペラ座の天井画、聖書の挿絵や教会のステンドグラスといった宗教関連の作品、巨大なタペストリー、陶器、更には舞台衣装のデザインも行っており、いろんな方面の仕事を手がけていたんだなあと驚きました。

 シャガールの作品を見ながらふと思ったのですが、確かに彼は類い稀な才能を持っていたのでしょうが、その才能が開花するには本人の努力(本人としては「努力」というよりは単に創作に没頭していただけなのかもしれませんが)だけでなく、当然のことながらそれを育てるパトロンの存在が不可欠で、その両者がうまく巡り会った結果として歴史に残る偉大な画家が誕生したのでしょう。また、時代背景というのも重要で、仮に現代のように世界中の人がいろんな物を発信し、膨大な量の”作品”が玉石混淆状態で溢れかえっているような状況でしたら、たとえシャガールのような才能があったとしても、その中から抜きん出るためには相当なプロデュースが必要になってくるでしょうし、そういうのはもはや無理なようにさえ思えます。だからこそ、シャガールというのは、「才能」、「それをサポートする人たち」、そして「時代背景」というものが絶妙なタイミングで出会って奇跡的に生まれたアーティストであると言えないこともなく、そう思うと彼が創った作品を目の前で生で鑑賞できることにしみじみとした感謝と感動を覚えずにはいられませんでした。