マシュマロ実験

 先日読んだ『努力不要論』という本に興味深い実験が引用されていました。『マシュマロ実験』と呼ばれるもので、'70年代にスタンフォード大学の心理学者が行った実験です。4歳児を被験者とし、お菓子を用意した部屋にひとりづつ招きます。この際に使われたお菓子がマシュマロなのでマシュマロ実験と呼ばれています。テーブルの上にマシュマロが1個乗っているお皿を置いて、「私はちょっと用事があるから15分間待っててね。このマシュマロを食べてもいいけど、15分後に私が戻ってくるまで食べずに我慢したらマシュマロをもう1個あげるよ。」などと言って部屋を出ていき、子供を一人にします。すると約7割の子供は待ちきれずにマシュマロを食べてしまいますが、残りの約3割の子供は食べないで取っておいたのでした。実験はここで終わったわけではなく、14年後、つまりその子供達が18歳になった時点でのSAT(日本のセンター試験のような学力テスト)の成績を比較すると、我慢出来た子と我慢出来なかった子の得点差はなんと平均で210ポイントもあったのだそうです。(SATの得点は200〜800点で表示されるので、210ポイントという差はかなり大きいと言えます。)追跡調査は更に続き、40年後の44歳の時点での年収と社会的ステータスを比較すると、やはり我慢できた子の方が高かったのだそうです。
 
 つまりは、社会的・経済的にどのような地位にまで達するするかにおいて「我慢強さ」はかなり重要なファクターであると言えるのでしょう。しかし、『努力不要論』の著者によると、我慢強さ(あるいは自制心の強さ)のある個体が”適者生存”的に生き残っていくのであれば、何世代も経つうちに「我慢強くない個体」は淘汰されていってもよさそうなものなのですが、実際にはそうなっていません。これはとりもなおさず、あまり後先考えずに、例えばとにかく目の前にある食料を食べたり、目の前にいる異性を獲得したりする方が生物にとって大切な「子孫を残す」という点においては適しているということであり、そこが面白いところだなと思いました。