立川吉笑

 名古屋で開催された落語家・立川吉笑さんの独演会を聴きに行ってきました。吉笑さんは、立川談笑師匠のお弟子さんで、現在二つ目。普通は数年かかると言われている前座を1年半で終えて二つ目に昇進したそうで、まだ真打ちになる前なのにラジオ等のメディアへの出演もたくさんあるうようで、そのうちのひとつをたまたま聴いて面白い人だなぁと思ったのが吉笑さんを知るきっかけとなりました。と言っても活動の拠点は東京なので生で観る機会は無いだろうな、残念だなぁと思っていたところ、名古屋で独演会があるという情報をキャッチし、何とかチケットを確保したというわけです。


 会場となったのは名古屋の栄という繁華街のとあるビルの地下にあるスパジオ・リタという定員70名ほどの小さなスペース。開場時刻になると続々と人がやって来て、客席はすぐにいっぱいになり、立ち見客も出るくらいでした。いやはや、まだそれほど名前が知られていない落語家の噺を聴きに来る人が名古屋にもこんなにいるんだなと驚きました。
 定刻になると出囃子とともに吉笑さん登場。自己紹介も含めたマクラが30分弱あり、まずは『十得』という古典を披露。汗びっしょりになって熱演し、ふっと一息つきながら短めのマクラを挟んで『桜の男の子』という噺へ移っていきました。この噺は江戸の町が舞台になっているので一見古典落語のようですが、ざっと調べてみたところそのような噺は古典には存在しないようなので、いわゆる「疑古典」という古典に擬した新作落語のようです。
 休憩を挟んで最後は吉笑さん作の『台本問題』という新作落語でした。中学生に家庭教師が指導しているというシチュエーションで、数学の文章問題の方程式が苦手だという生徒のためにオリジナルの文章問題を作成したのですが、これが台本形式になっていて・・・、と展開していきます。
 三席とも中身がギュッと詰まっていて、退屈する瞬間が全くなくて、吉笑さんが創造する落語の世界に引き込まれっぱなしの2時間でした。これでまだ二つ目なのですから今後どうなるのか楽しみです。
 終了後、吉笑さんが客席の後ろの方へふらりとやって来たので、吉笑さんの著書『現在落語論』にサインをして頂きました。この本はまだ読み始めたばかりですが、タレントの軽いエッセイではなくて、落語の本質について論じられたレベルの高い内容となっておりなかなか読み応えがあり、この吉笑という落語家、ただ者ではないなと感じ入りました。これからも注目していきたいですし、このような独演会が続いていくことを願っております。

現在落語論

現在落語論