落し物

 外を歩いていて、他の人が落とした物(財布、携帯電話等々)を拾うことがかつてはよくありました。拾ったものは勿論警察に届けました。また、向こうから歩いてくる女性がカバンから何か取り出した際に落とした何かを「あ、落ちましたよ!」と声を掛けたことも何度かあります。他の人が落とした何かに遭遇したり、今まさに落としたという場面に居合せる才能のようなものが自分にはあるのではないかと冗談半分に思ったこともありました。
 そんな私でしたが、最近はどちらかというと、自分が落とす側になることが時々あるようになってきました。今日も、会社の帰り、銀行のATMでお金をおろした後、カードがちゃんと財布の中の然るべき場所に収まっているかとか、その財布がカバンの中にちゃんと入っているか、といったことを確認する作業に気をとられていたせいで、通勤電車の定期券を取り出した際に同じポケットに入っていたあるチケットを落としてしまったことに気がつきませんでした。そうしましたら、私が落とした瞬間を目撃していたのか、15歳ぐらいの背の高い少年がそのチケットを拾って私を追いかけてきて「これ、落としましたよ」とニッコリ微笑みながら私に手渡してくれました。なんてイイ少年なんだろう、と感激した私は「ありがとう!」とお礼を言うと、その少年はさっと去っていきました。こういう風に、見ず知らずの人からちょっとした親切を受けることは時々ありますが、「ありがとう」などの言葉でしか感謝を表現できなことをいつももどかしく感じます。本当は自分がどれだけあなたの親切に感謝しているかをもっとしっかりと伝えたいのに。今回の場合だと、その少年に3,000円の図書カードの1枚でも御礼として進呈したいくらいでした。そこまでお金が絡んだ方法でなくても、ネットのブログやツイッターで☆(スター)を贈ったり「いいね」をクリックしたりすることに相当する何かをリアルな世界でも出来たらいいのになぁ、と思います。