節分

 節分に恵方巻きを食べることが既に年間行事のひとつとして定着したように思えます。恵方巻きが初めてコンビニで発売された当初、こんなふうになるとは全く予想していませんでした。
 従来は「節分と言えば豆まき」でしたが、今では恵方巻きが豆まきを押しのけて事実上の節分の主役の座についたと言っても過言ではありません。
 経済効果の面においても、豆まきに際して売れるのは、生の(あるいは煎った)大豆と紙製の鬼のお面ぐらいで、金額的には全然大したことはありませんし、この豆まき分野に新規に参入しようという企業は無いでしょう。一方の恵方巻きは、当初は普通の巻き寿司でしたが、年を追うごとに美味しさ、豪華さを追求する方向へ突き進み、単価も上昇し、これはビジネスチャンスだということで新たに参入する業者も増え、それらが絡みあって大きなうねりとなって勢いが加速しているように思えます。

 そういった恵方巻きビジネスには負の側面もあって、朝日の電子版に、大量の恵方巻きが廃棄物処理工場へ持ち込まれたとの記事が報じられていました。これは店頭に並ぶことなく食品工場から廃棄場へ直接持ち込まれたのだそうです。何故こんなことが起こるのかというと、商品が不足することが無いよう多めに作っておくように販売店側から製造工場に指示があるからです。よくラーメン屋で「スープがなくなり次第終了」とか、パン屋さんで人気の商品がすぐに売り切れてしまったりということがあり、消費者としては残念だけど仕方が無いか、とそれなりに納得することは出来ます。しかし、製造工場と販売店の取引においては「売り切れちゃった。ごめんね。」は通用しなくて、「えっ、商品が無いの?じゃあ、あんたのところとはもう取引しないから」と切り捨てられることになるので、製造工場側としては廃棄になるものが大量に出るかもしれないことを承知で多めに作らなくてはなりません。もう少し日持ちのする食品であればメーカーの直売店やアウトレット店で「わけあり商品」として売ることが出来るのでしょうが、恵方巻きのような日配品はそういうわけにもいきません。
 こういう負の面にスポットを当てて殊更大げさに取り上げるのはいかにも朝日新聞って感じですが、食品メーカーに勤める身としては考えさせられる記事でした。