『62歳、旅に出る!』

 その本を最初に見かけたのがどこだったのか、つい最近のことであるにも拘らず、あまりはっきりとは覚えていません。たぶん、アマゾンのオススメ欄で目にとまったのだと思います。どんな感じの内容なのか確認しようと、いつもの書店へ行ったのですが、あいにく在庫がありませんでした。その本というのは『62歳、旅に出る!』という単行本。ネットの紹介記事によると、東京の中学校で理科の教師として定年まで勤め上げた後、妻に先立たれてしまい途方に暮れるのですが、一念発起して海外を旅することにしたところから始まる渡航日記風のエッセイらしいです。本来であれば目次を見たり、パラパラとページをめくってみてから購入するかどうかを決めるところなのですが、私はもともとこういう日本人が海外へ行ってあれやこれやとトラブルに巻き込まれたり、逆に外国人が日本で暮らしてみて感じたことを語る、と言ったカルチャーショック系の本が好きなので、中身をチェックすること無く買いました。「渡航日記」とあるように、本当に日記のように書かれていて、似たような内容が幾つかあってやや冗長な部分もありつつも、まあ面白かったです。そして面白いと思うと同時に、私自身はこの著者のように日本から遠く離れた国へ行き、その地で新たに人間関係を築いて逞しく生きていくことは、若い頃ならともかく、て言うか若い頃には私も実際に単身渡米したりしたのですが、定年退職後にそのようなエネルギーがあるとは思えないので、この元理科教師の男性は凄いバイタリティだなぁと感心しました。ただ、イメージできなかったことがひとつありました。それは「妻に先立たれた男性の心境」。それは生前の夫婦の関係の状態によって様々だとは思うのですが、全く想像できません。SF小説なんかで、人間そっくりに造られたアンドロイドが、感情、特に愛情が無いことに苦悩する、みたいなシーンがありますが、それに近いかもしれません。