FINGERDANCE

 米国オレゴン州の小さな町に住んでいた頃のある週末、同じ研究室の韓国人の女の子とダウンタウン(と言っても大した繁華街ではないのですが)をブラブラと歩いていたらアコースティックギター(以下アコギ)のライブ演奏会の案内が目にとまりました。アコギにはそれほど興味は無いし、演奏者が誰なのかも知らなかったのですが、たまたま「間もなく開演」というタイミングだったし、他にこれといってすることも無かったので中に入ってみることにしました。入場料は確か数ドル程度だったと思います。会場は、古い雑貨店の2階の空きスペースに40個ほどのパイプ椅子を並べただけの地味な感じで、ライブ演奏というよりは町内会の集会でも始まるかのような雰囲気でした。開演前の時点で、私の期待度はこれっぽっちもありませんでした。しかし、ひとたび演奏が始まると、「おお、これは!」と驚いて身を乗り出してしまいました。彼の奏法(ハンマリングオン、プリングオフ。日本では”ライトハンド奏法”と言ったりしますが)は、ロックのギタリストが速弾きする時に、曲の一部分で使うのは知ってましたが、アコギで、しかも最初から最後までこの方法で、まるで鍵盤楽器のように演奏するのを見るのは初めてで、驚きました。隣に韓国人の女の子(美人^^)が座っているのも忘れて聴き入ってしまい、ライブが終わる頃にはすっかりファンになっていました。
 YOUTUBEの動画(FINGERDANCEという曲)では、弦楽4重奏とパーカッションの伴奏が入ってますが、私が見たライブでは、アコギ1本だけでした。そして、この動画には無い何かが生演奏には有り、魂に響いてくる感じでした。今はネットで何でもダウンロード出来てしまい、この技術が無かったら到底出会うことが無かったであろう物を見ることが出来るのはとても便利なのですが、やはり生でしか伝わらない「空気」や「バイブレーション」ってあるんだなあと思いました。