オフィスアワー

 アメリカの大学の教授や准教授は自分専用の部屋を持っていて(日本の教授・准教授も持っていると思いますが)、講義や研究室での作業以外の時間は、その部屋で諸々の仕事を行います。その中には学生からの相談や質問に応じるための時間が必ず設けられていて(例えば、毎週火曜日の13:30〜15:00と木曜日の10:00〜12:00といった具合に)、それは「オフィスアワー」と呼ばれており、学期の初めに学生達にアナウンスされます。
 教授の部屋の前にクリップボードに留められたスケジュール表があって、該当する時間帯に自分の名前を書き込むとか、あるいはネットの掲示板やメールを使って予約をしてから教授なり准教授の部屋を訪れることになります。これは日本の大学では一般的には無いシステムで、予約さえすれば誰でも教授に会って話が出来ることは、学生にとってはありがたいと思いました。
 但し、私の知っているあるアジア系留学生などは、授業の内容についてある准教授に質問に行ったところ、「それは『質問』ではなく、あなたが授業の内容を聴き取ることが出来ていないだけだ!そんなことで私の貴重な時間を奪わないでほしい!その程度の事は他の学生にでもきいてくれ!」と追い返されたこともありましたので、あまり気軽に会いに行くわけにもいきません。(この准教授は気難しい人だったのでこういう態度を取りましたが、もっと優しい人も勿論いらっしゃいました。)
 「質問」というのは、聞き逃した事を尋ねるのではなく、講義を理解し文献を読み込むということを踏まえた上で、その先にある発展的な疑問を教授と議論するという意味合いが強く、ある程度以上のレベルが求められるようで、質問に行くのはどちらかというと優秀な学生の方が多いように思いました。
 学究の世界というのは、とかく閉鎖的で排他的になる性質を宿命的にはらんでいるものですが、オフィスアワーという制度の存在は学生と教授との距離を縮め、お互いに刺激し合うことが出来るという点において意義のある仕組みだと思いました。