『さくら』

 一日の仕事を終えると大抵はそれなりに疲れています。そんな状態で電車に乗って座席に腰を下ろし、カバンから本を取り出して読み始めるといつの間にか居眠りしてしまうこともあります。しかし、その本が面白いと眠気が吹き飛んでずっと読んでいられることもあり、眠ってしまうかどうかが本の面白さを表すバロメーターだったりします。そして今回読んだ西加奈子さんの『さくら』は眠くなることなくずっと読んでいられる方の本でした。ストーリーとしてはさほどスケールが大きいわけでもなく、主に家庭内と学校での人間模様が描かれていて、どこがどう面白いのかを説明するのは難しいのですが、やはりそういった内容であっても西加奈子さんの文章に乗ると、何故かグイグイと引き込まれてしまうのでありました。見方によってはひどく暗い部分もあったり、性について赤裸々語っていたりするので、万人向けではないかもしれませんが、個人的には好きな作品です。そしてこの小説が映画化されて昨年公開されました。予告編の動画を見たら何だかちょっとイメージが違う感じがしたのですが、時間があれば観てみたいです。