集中力はいらない

 集中力に関する書籍はたくさんあるようです。「いかにして集中力を上げるか」がそういった本のテーマになっていて、仕事で成果を上げたり、スポーツで結果を出すためには集中すること、集中力を上げることが重要で、どうすればそれが可能か、といったことが書かれている本のようです。私自身はそういった本は読んだことが無いのですが、たぶんそうだと思います。その手の本がたくさん書店に並んでいるということは、集中力が重要だと感じていながら集中力が無い人が世の中の大部分だということの証左と言えましょう。

 しかし現代社会において「集中力が無い(若しくは足らない)人」が多いということは、そうであることが人類にとって都合が良かったからではないのだろうか。集中せずに意識を分散させている方が適者として生き残ってきたのではなかろうか。逆に集中力が高い個体は人類の長い歴史の中でだんだんと淘汰されていったのではないか。脇目もふらず、ひとつのことに没頭しているうちに捕食者に襲われるなどして。というようなことに薄々気が付いてはいたものの、やっぱり集中力は大事なんだろうなと思っていた時に出会ったのが『集中力はいらない』という本でした。この本では、集中ではなく意識が分散していることの重要性を説いており、良い発想は集中状態ではなく意識が分散している時に生まれることが著者の経験に基づいて説明されていました。とは言うものの、最初からずっと意識を分散させるのではなく、ある程度「集中的に」思考することがやはり良い発想を得るための前提条件として必須ではありますが。