東京貧困女子。

 

 『東京貧困女子』という本が出たのは2019年でした。東京で貧困に陥った女性にインタビューした記事をまとめたノンフィクションで、出版当時は話題になり私も興味を持ったので書店で手に取って目次を見たり、ページをパラパラとめくって所々読んでみたりしました。しかし、そこに書かれていたのは相当気分が滅入りそうな内容で、他人事とは言え、これを読んだら精神的なダメージを受けそうな気がしたので「今はちょっと無理だなぁ・・・」と思ってそっと棚に戻しました。そして4年の月日が流れ、ツイッターだか何かで『東京貧困女子』のことが取り上げられているのを目にしました。以前はダメだったけど今なら読めるかも、と思ったので買って読んでみました。貧困というのは、例えば学歴が高くないために十分な収入が得られる職業に就けずにお金が足りない生活になってしまう、というぐらいしか知らなかったのですが、この本を読んで、幾つかのパターンがあることを知りました。たとえ偏差値がトップレベルの大学を卒業していても、例えば結婚や出産を機に退社し、その後、離婚してシングルマザーになったり、あるいは重い病気に罹って退職せざるを得なくなるとか、女性がひとたびレールから外れてしまうと、この国にはそういった女性をサポートする制度が整っておらず、どれだけ一生懸命働こうとしても貧困から逃れられないという事実があることに大変驚きました。この本に登場する例は若干「盛ってある」、即ち悲惨さを拡大して表現してある感じはあったものの、日本の現代社会が抱える暗部がえぐり出されていて、これはこのまま放置してはいけない、なんとかせねば、という感情が湧き上がってきました。